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Estonian Music Project 2005/Universumi hääled Vol.1

ウルマス・シサスクの世界

銀河巡礼《南半球の星空》作品52 全曲 ~古(いにしえ)のアボリジニたちの見た星空へ~


「第8章:銀河幻想曲」の照明



リハーサル風景(下は内部奏法の練習中)





 昨年秋、吉岡&秋場の Estonian Music Project の活動として、オール・シサスクプログラムによる 星空からのメッセージ を開催しましたが、今回はそれに続くコンサート Universumi haaled (宇宙の声)Vol.1として私たちの念願だったシサスク作曲《銀河巡礼》第2集「南半球の星空」op.52全曲を演奏しました。シサスク氏が星の曲を演奏する際、神話などのトークもしているということから、私たちも朗読をはさんだ構成で演奏を進めることにしました。朗読の原稿はシサスクの記述より和訳(by吉岡)したものをもとに、語りのたかぎ氏が台本を作って下さいました。「南半球の星空」は1994~95年に作曲。オーストラリアの先住民族アボリジニ神話(Charlesの著作から引用)やギリシャ神話、あるいはシサスク自身の考えなどにより全11章に分け、一つの曲集にしています。またこの作品では特殊奏法(内部奏法)が数多くあります。弦をはじく、弦を押さえて鍵盤を弾く、弦をグリッサンドする、弦を手のひらでたたくetc..。今回、東京オペラシティさんに特別許可を頂いております。また今回はオペラシティリサイタルホールを横型に使用し、曲ごとに照明も変えました。
 シサスクの音楽と出会ってからはいつの間にか5年以上が過ぎました。その間私たちは実際にコンサートでシサスクのピアノ曲を弾くことによってその音の世界に魅了され続けました。昨年は特に精力的に多くの方々にシサスクの星の音楽を聴いて頂いていますが、たくさんの反響を得ました。「ピアノからこんな音が聴けるとは思わなかった」「現代曲は苦手だったがシサスクは一度聴いただけで、惹き込まれてしまった」etc..
 吉岡は昨夏、エストニア(作曲部屋のあるヤネダ村の星の塔)でシサスク氏にお会いしてきました。シサスク氏は目の前で約1時間半、トークを交えて演奏してくださいました。その様子は、順次ブログ「エストニア音楽探訪」に発表しています。また今回のチラシには吉岡が八ヶ岳で演奏の際、演奏に星の映像を投影して下さっている写真家、彗星探索家の有賀哲夫さんの一番のお気に入りを提供して頂きました。
 さらにシサスクご本人と、ピアニスト舘野泉先生には恐れ多くもコンサートに寄せてということでお言葉をいただき、演奏会当日は舘野泉先生がお聴き下さり、「とても良い演奏会でした」とお言葉を戴きました。多くの方々のお力に支えられ、ここまで来られたのだと思っております。心より深く感謝申し上げます。



 ~親愛なる音楽と星空の友へ~

 あなた方がこのコンサートでお聞きになる音楽は、何百万年もの昔にその起源を持つものです。私は、ただそれをあなた方にも聴けるようにしただけなのです。こうした音楽を聴き、また聴けるようにする、という能力もまた、何百万年もの昔からあったものです。私は、ただそれらを結びつけただけなのです。
 ユウコとタカヒロはもちろん何百万歳というわけではありませんが、彼らは我々とあなた方を引き合わせてくれました。
 もっと空を見上げ、そして耳を澄まして下さい。そうすれば、星空全てを音楽に書き表したいという私の願いが分かって頂けることでしょう。

                           

ウルマス・シサスク
エストニア



 ~舘野泉先生より コンサートに寄せて~

 六年前、演奏旅行に行ったタリンの街角でウルマス・シサスクに偶然出会った。初対面であり、数分間立ち話をして別れただけなのに、強く印象に残るものがあった。比較的小柄であるが逞しく精力的で、それなのに、この世界とは別のところにいて、それなら星の王子さまといいたいが、バオバブのような怪しい姿もある。その二日後に初演された彼のオルガン曲は、凝縮された強烈な精神力を放つかのようであった。あの力はどこから来たのか不思議で、違う世界から放射されているようでもあったし、シサスク自身が星の創世のごとく、巨大なエネルギーとなって燃えているかのようでもあった。
 シサスクの大作、<銀河巡礼>第2集「南半球の星空」が、気鋭のピアニスト秋場敬浩、吉岡裕子のお二人、そしてたかぎひろみちさんの朗読を得て初演される。オーストラリアの先住民族アボリジニによって古くから伝わる伝説、ギリシャ神話も包み込んだ広大な宇宙が広がる。聴きのがしてはならないだろう。



南半球の星空

1.序章:星空に関するアボリジニの思想(秋場)
 カメレオン座、八分儀座

2.アボリジニ伝説「小さなウルダナミ母さん」(秋場)
 テーブル山座、飛び魚座

3.アボリジニ伝説「火の起源とモロヴィエの狩人」(吉岡)
 ケンタウルス座、南十字座、はえ座

4.伝説「エリダヌス川」(吉岡)
 エリダヌス座

5.アボリジニ伝説「虹へび」(秋場)
 水へび座、孔雀座、南三角座

6.アボリジニ伝説「モパディッツと黒ボタンインコ」(秋場)
 コンパス座、風鳥座

7.ギリシャ神話「アルゴナウテス」:《アルゴ船座》~3つの断章(吉岡)
 とも座、帆座、竜骨座

8.アボリジニ伝説「コールサック」:4部から成る《銀河幻想曲》(吉岡)
 第1部 大マゼラン銀河
 第2部 小マゼラン銀河
 第3部 コールサック(石炭袋)
 第4部 宝石箱

9.アボリジニ伝説「イヌアの梯子」「天の川の男」(吉岡)
 巨嘴鳥座、インディアン座

10.アボリジニ伝説「天の川の男」(秋場)
 祭壇座、かじき座

11.「生命の循環」(秋場)
 時計座、レチクル座



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